最近はネットでマイナンバーカードの話がよく上がってるので、電子国家に住む日本人としてエストニアの ID カードについて書いてみようと思う。いつもどおり主観と偏見にまみれた記事を書くので正しい情報は直接エストニア政府のページから確認してね。
まず大前提としてカードはあくまでカードであって個人番号と紐付いた情報にアクセスするためのインターフェースの一つ。紙切れとまでは言わないけど、個人情報にアクセスしたり電子署名をしたりするには PIN コードが必要なので本人以外にはそこまで価値がない。ついでにカードリーダーを使うのは面倒だからエストニアに住んでる人の多くはスマホのアプリと暗証番号で個人情報を利用できる SmartID を使ってると思う。
電子署名をしたり個人情報にアクセスしたり ID を使って色々できるけど、その認証には
の 3 つの方法がある。どれも所持+知識を確認しているので二要素認証となる。ID カードはあくまで一つの手段、と先程述べた理由がこれ。
マイナンバーカードの話をするとやたら「盗難/紛失時はどうするの?」と聞かれるけどPIN コード(知識)が無ければカードに書かれている以上の情報は得られない。そして ID カード以外の方法でログインすれば何か漏れる前にアクセスをブロックしたり、警察だか国だかに連絡して止めてもらうこともできる。再発行は高速(特別料金)の場合 5 日以内、通常の場合 30 日以内と定められているが、実際は一週間以内に届くらしい。その間の身分証とか病院とかどうするの?という話はわたしも気になるのでもし無くした人がいたら教えてほしい。
ID カードは身分証としてどこ行くときも持ち歩く。日本で身分証を確認されるときは公的な手続きをするときみたいな印象があるけど、エストニアではスーパーで酒を買うときもいちいち確認される。あまり入った記憶がないけどバーやカジノ等年齢制限のある場所はまず必要だと思う。名前と写真が載ってるので日本で言う免許証みたいなもんだと思う。普通に日本でも学生証なり保険小なり持ち歩くよね…?
日本人に「パスポートの代わりに使えるんでしょ」と言われたことがあるけどこれは YES であり NO でもある。エストニア人がヨーロッパを旅行する分にはパスポート不要でこの ID だけを見せれば良い。けど日本人はパスポート必要、あとエストニアに住む日本人がエストニアに入国するときにビザを見せる感じで提示する。例えば私の ID カードは労働 TRP (滞在許可証)でもあるので、職業と勤務先が書かれてたりする。仕事以外でも結婚の場合ならその旨が書かれてるはず。
つまりエストニア人にとってはパスポートになる(※EU 内)し、エストニア在住外国人にとっては滞在許可証(ビザ)でもある。
免許証も ID と紐付いてるから ID カードがあれば照合出来るけど、免許証も普通に存在する。(でも ID から照合できるから免許証は持ち歩かなくて良い、という話)なんなら ID カードを持っていなくても個人番号さえ伝えれば良いわけだけど、一応 ID は持ち歩かないといけないことになってる(ハズ)。実際捕まったときにどうなるかはグレーゾーン?誰か教えてほしい。
ヨーロッパ内は運転免許証が共通だけど、エストニア国外出るときはまず確実に免許証を持ち歩かないといけないと思う。
保険証というものが存在しない、ハズ。保険に入ってるかどうかも ID と紐付いてるし、国民医療ポータルで確認できる。つまり病院へ行くときは ID カードさえ提示すれば名前や住所を書くことはないし医療機関に過去の医療データも共有する/しないを選ぶことができる。ID カードから逸れてしまうので細かい部分は端折るけど誰か閲覧したかの履歴なんかも医療ポータルで確認できる。
医者から直接またはオンラインで処方箋をもらったときも ID に紐付いてるので、エストニア国内の薬局に行ってカードを渡せばその薬をもらうことができる。
ちなみに他の EU 圏に行くときは欧州医療保険証(EHIC)持ち歩く必要がある。当たり前だけどエストニアの ID は国内でしかカバーされてないので。
端的には NO、Smartcard と呼ばれる交通カードがある。首都タリンでは居住者にとって公共交通機関が無料だけど、その恩恵を受けるにはキオスクで買った Smartcard を ID(と紐付いている住所)と紐付ける必要があるから、ID カード=交通カードという勘違いが生まれたのではないかと予想。オンラインで Smartcard に書かれた番号と個人番号を入力するだけで簡単に紐づけできたと思う。多分 10 秒でできる。
ここ数年で発行されている新しい ID カードには同じチップが入ってるらしいのでもしかしたら近い未来に ID カードが交通カードとしてピッと出来るようになるかもしれない。
あまり語られてないけど個人的にすごく推してるのは、ID カードを民間の適当なお店のクライアントカードとして使えること。スーパーやらコンビニやら別々〇〇カードで財布がパンパンになることは人生で一度は経験すると思うんだけど(今は大量のアプリかもしれない)、それが圧倒的に減る。エストニアでも勿論店ごとに違った〇〇カードが用意されてたりするんだけど、ID カードを登録できるところは〇〇カードを発行する必要がない。行政とは関係ないけど、一枚のカードで何役もこなす、の最大の理由じゃないかと思う。
会社を持っていれば ID と会社も紐付いているので、お店に行って個人としてではなく会社として支払うことができる。複数の会社がある場合はそれも選べる。顧客カードの延長線みたいなものだけど、人も店も選ぶ話ではある。
ここでは物理カードを使って何ができるかを書いたけど、全部 ID に紐付いてるおかげ。電子投票やオンライン医療(過去の検査結果や処方箋の閲覧)、教育(試験の結果の閲覧)、電子署名、確定申告など幅広い範囲で電子化が進み、面倒な手間がかなり少ないと感じる。ID カードはあくまでその表面に湧き出たほんの一部みたいなものだけどやはりまとまってて便利!これから日本のマイナンバーカードがどうなっていくのか、楽しみにしてます。
電子国家っぽさが感じられる記事も併せてどうぞ。